小説「草枕」の舞台「前田家別邸」

前田家別邸・入口門付近

 

小説「草枕」の舞台「那古井温泉」のモデルとなった、玉名市天水の小天(おあま)温泉。

 

いまでも「草枕温泉てんすい」「那古井館」の2つの温泉施設が残っていて、小天温泉を楽しむことができます。(明治時代は、5~6軒あったそうです。)

 

前田家別邸・浴場外観

 

明治30年の暮れに、夏目漱石は同僚と2人でこの前田家別邸に訪れ、数日間逗留したときの経験をモデルに、小説「草枕」を執筆しました。

 

今回は、その前田家別邸をご紹介させていただきます。本館と離れの一部はなくなってしまい、母屋は建て替えられていますが、漱石が宿泊した離れの6畳間と浴場が現存しています。

 

前田家別邸・浴室(女湯側)

 

平成16年に修復工事が行われた浴室。失われていた上屋を復元していますが、浴場のコンクリート部分は当時のままです。

 

浴室内立入禁止の看板

 

明治時代の貴重なセメントづくりの遺構であるため、歴史遺構の損傷を防ぐために、浴室部分に降りていくことはできなくなっています。

 

半地下に彫り込んで作られた湯壺

 

左側が男湯、右側が女湯となっています。湯口が男湯にしかないのがわかると思います。そのため、男湯のほうが湯温が高くなっていました。

 

そのため、湯温が高い男湯へ入ろうとした卓と漱石の接近遭遇が生じたわけですね。

 

前田家別邸・本館跡

 

本館跡。建設当時はここには温泉旅館として運用されていた木造三階建ての建物がありました。

 

前田家別邸・離れ(内観)

 

離れの現存部分。この六畳間のほか、四畳半の部屋があと2つありましたが、そちらは現存していません。

 

漱石は、この六畳間と四畳半の部屋の両方を使っていたと思われます。「徘徊する振袖の女」は六畳間からは壁に阻まれて見えないのですが、四畳半の部屋からは中庭を隔てて母屋の廊下を見ることができます。

 

前田家別邸・離れ(外観)

 

見学料金なども特に必要ありませんので、ぜひ見学なさってくださいね。駐車場までの道がすこし狭いので、ご注意ください。