崖に巨大な梵字が数多く彫られている場所が、熊本県玉名市青木にあることをご存じでしょうか。
これは、青木磨崖梵字群(あおきまがいぼんじぐん)といって、平安末期から室町時代にかけて彫られたものではないかと推定されています。500~800年ほど前に当時の修験者が彫ったものとされており、梵字1文字が仏様や菩薩様を意味しているといいます。
梵字と、仏様や菩薩様との対応表も掲示されていました。どんな史跡でもそうですが、正しい意味や背景がきちんとわかった上で見ないと、やはり面白くないのではないか、と思います。それゆえに、こういう掲示があるのはうれしいですね。
梵字自体を神聖な文字として崇められてきたのは、仏教伝来とともにはいってきた梵字が、あまりに難解であったためではないか、と言われています。
青木熊野座神社では磨崖梵字群も見応えがあるのですが、3本のナギの大木もたいへん見事です(玉名市指定天然記念物でもあります。)。樹齢400年といい、不動明王のご神体として奉られています。
青木磨崖梵字群(熊本県指定史跡 昭和50年3月24日指定)
梵字は、古代インドの表音文字で、中国や日本では、梵字のもつ呪術的威力が強調され、梵字1字が一定の仏や菩薩を表すようになった(種子という)。
ここに見られる巨大な梵字群は、平安末期から鎌倉~室町時代に盛んになった修験者によって刻まれたものと推定されている。
高さ約9mの凝灰岩の切り立った崖に力強い薬研彫りで陰刻された種子は、落下した岩の中に認められる8字を含め、20字が確認される。なかでも、最大の梵字、(倶利伽羅龍王の種子)は、蓮華座を含め3.8mの長さをもち、中心に剣を貫き、当梵字群中最も素晴らしいものである。
500年以上もの風雨に晒され、耐えているのですから、ものによっては認識が難しくなっているものもあります。右は釈迦如来を意味する梵字です。
梵字群最大規模の梵字、剣不動明王。2つの梵字を剣がつらぬき、一体化させたもので、梵字群の中心となるものです。
丸3つで構成されている梵字群は、阿弥陀三尊を意味します。いちばん上の丸内の梵字がキリクといって、阿弥陀を意味しています。
阿弥陀三尊と剣不動明王にはさまれたものが、梵字群最小のものとなる、大日如来を意味するアーンクです。こちらも、阿弥陀三尊と同じように丸で囲まれていますね。
残念ながら、このように崩れてしまって判読不能なものもいくつもありました。500年以上の風雨や地震などに耐えてきたのですから、むしろここまで残っていることが奇跡なのかもしれません。
途方もない年月を経ている梵字群とナギの大木は見応えがありますよ!熊本にこんな風景があったのかと驚かれるはずです。