熊本市の南端、川尻の大手酒造メーカー「瑞鷹」(ずいよう)さんの東肥大正蔵にお邪魔してきました。熊本から古くから伝わる赤酒(灰持酒の一種)を生産する数少ないメーカーです。入館料は無料で、市販されていない原酒の試飲などもできます。
赤酒は、熊本県外のかたには馴染みがないかもしれませんが、熊本ではお正月のお屠蘇として欠かせないものであるほか、かつては冠婚葬祭には必ず飲まれるものでした。また、しょうゆによくあうということで、料理酒としても使われています。瑞鷹は、その伝統酒である赤酒を、「東肥赤酒」というブランド名で作り続けている酒造メーカーなのですね。
瑞鷹の生産設備も熊本地震で被害を受け、売店の女性職員さんにお話を伺うと、地震で出荷予定の赤酒や清酒約1万本が破損、この東肥蔵も被災して土壁が崩落するなどしたということです。熊本地震(前震)が発生した2016年4月14日は、瑞鷹が新酒の仕込みを祝う「甑倒(こしきだお)し」を終えた5日後でした。生産設備だけでなく市の景観重要建築物に指定された事務所も、瓦が落ちたりして、閉鎖されていました。
しかし、生産設備は壊れても、残った醪(もろみ)から酒作りを再開させたということです。伝統を受け継ぐ酒造メーカーならではの意地を感じさせます。
瑞鷹(ずいよう)の名称は、酒蔵に鷹が舞い降りたことから生まれた銘柄名ということです。肥後藩は加藤清正公の時代から、清酒の製造を禁止するなど、ずっと赤酒を保護していましたので、肥後藩がなくなったあとでも、熊本で飲まれるほとんどのお酒が(日本酒の一種である)赤酒だけだったとのことです。その状況の熊本で、瑞鷹はいちはやく清酒の製造に乗り出しました。
赤酒を作るメーカーもいまでは瑞鷹をふくめ2社しかありませんが、戦前は15社が製造していたということです。なぜ戦後、激減したかというと、太平洋戦争の時期では、清酒より米の消費量が多い赤酒は、米穀の逼迫を理由として政府より生産が全面的に禁止されていたからです。瑞鷹も神職からの要望で赤酒の生産再開をしたということでした。
東肥蔵はくまもと工芸会館ともつながっていますが、くまもと工芸会館の駐車場は催しものや講座などでいつも満杯ですので、東肥蔵の駐車場を利用されてくださいね。