民芸品だけを集めた博物館が、熊本にあることをご存じでしょうか。
民芸品(=民衆的工芸品)、すなわち芸術作品や鑑賞用などではない、日常の手仕事で用いられる日用品のことですが、ここから「用の美」を見いだし、展示している博物館が、こちら熊本国際民藝館となります。
初代館長である外村吉之介氏が世界各国をまわって収集した陶磁器、ガラス、玩具、染織品、木工品などが展示されています。
入口近くでは、このように民芸品の販売も少量ながら行われています。
民衆の日常生活から生まれた実用品を、民芸品というわけですから、常設展示室には作者名のわかるものなどは、いっさいありません。
しかしどれも民俗資料として貴重なものばかりで、民芸運動が起こっていなければ、名工が作ったわけではない、銘のあるようなものではない民芸品などは、とるに足らないものとして、きっと現在まで受け継がれることなく、失われていたであろうと思います。
これなどは、おかもちではないかと思われるのですが・・・。電話番号まで書いてあります。
好きな人は何時間でも過ごせる場所だと思います。
企画展示室では、「第3回戸田東蔭コレクション~江戸・明治期の食文化を支えたうつわ展」が開催されていました。江戸時代から昭和まで、さまざまな日用品が展示されていました。(この記事の投稿時点ではすでに終了しております。)
入館時には住所氏名を記帳するノートがありまして、こちらに登録しておくとイベントなどの案内を送ってくださるそうですよ。
その他、企画展示室に展示されていた品々。
熊本国際民藝館は、郷土館ではありません。世界各地の民芸品を収集しています。
また、物産館ではありません。物産品ではなく、日用の堅実な品物を収集しています。
民俗資料館でもありません。新古を問わず、生活的な価値の高さで収集されています。
懐古趣味でもありません。前述のとおり、古いから価値があるという基準ではないのです。
珍品主義でもありません。有名人のもの、珍しいもの、飾り物はありません。
機械の否定でもありません。良い品物を作るために機械を使うのは当然だと考えています。
エチオピアの椅子があったり、日用品であれば地域を問わないのが、国際の名を冠するゆえんです。
熊本国際民藝館は、暮らしのなかで働いてくれる民芸品には、健康でたくましく、無駄のないいばらない美しさを備えているのだと説きます。こういうものによって、誰でもが美しい暮らしを実現しようと考えているのだそうです。
なおこの土蔵造りの建物は、もともとは岡山県にあったもので、安政6年に島根県の棟梁が建てたものをこの地に移設したということです。
所蔵品は、織物443点、陶磁器992点、木工品370点、玩具690点、その他546点の計3041点におよぶそうです。
民芸品に興味のあるかたは、ぜひ訪ねてみてください。年末年始は12月26日から1月4日にかけてお休みされるそうですから、お気をつけくださいね。