菊池養生園初代園長で、現在は菊池市泗水町で、養生伝承館館長をなさっている竹熊宜孝さん。
食と農を基本に、「病気にならない体」をつくる診療所を目指して、農園併設の病院、菊池養生園を作られた方です。診察を受ける住民のかたに無農薬の野菜を食べてもらい、いかに「食」が健康を支えているかを目に見える形で知ってもらいたいというのが、竹熊先生の思いです。(先生いわく、「医者が百姓をしたのではなく、百姓が医者になったのだから仕方ない」。)
無農薬にこだわるのは、竹熊先生の弟さんの農薬中毒になったことが大きなきっかけで、農薬の恐ろしさを知った先生は医者をこころざすようになりました。ホリドールは有機リン系の殺虫剤で毒性が非常に強く、稲につく最大の害虫ニカイメイチュウによく効くため、よく農薬として使われていましたが、毒性が強いために殺人や自殺に使われることさえありました。
施設の名前にも使われている「養生」という言葉。この言葉に、竹熊さんの思いが込められています。
養生を辞書でひくと、①「からだを大切にして、健康の増進をはかること」②「病後、体力の回復を図ること」とあります。この養生という言葉、先生が尊敬されている熊本市の開業医、小川先生がよく使っておられた言葉だそうで、自らの命は自らが守る、この姿勢を住人の方達にもくみ取って欲しかったとのことです。
「養生」とは自ら生命を養うと書く
食養生 心の養生 身の養生
これともに養生の道なり
また自ら病をみつけ 手当し
癒やすことも 養生の術なり
(養生語録)
竹熊先生みずから養生伝承館の建物のなりたちを解説していただきました。
いまは龍門ダムに埋没した、合計9軒分の民家の解体木材を再利用して、養生伝承館は建設されました。
養生説法の噂をききつけて、養生伝承館には老人会や婦人会、PTA、修学旅行生が押し寄せるようになりました。一時期はよくテレビでもお見かけしておりました。菊池養生園での養生説法、いわゆる”クマの説法”は、残念ながら、2012年3月30日が最後となりました。
しかし、ここ養生伝承館で”養生塾”として再スタートされています。お呼びがかかるまでは舞台に立つのが”芸人”と心得ているのであります、とのこと。
竹熊先生は小さいころより絵が好きで、賞状ももらっていたほどでした。あるとき、ある外国の女流画家のモデルが立ち寄られ、自分を書いて欲しいと申し出があったそうで、それで数人の画友達でデッサン会をしたのが裸婦絵を描くようになったはじまりだそうです。そして68歳にして裸婦展を開くことになりました。
養生園2階は、障がい者総合支援法にもとづく就労継続支援B型事業所「まるーわ」となっていて、障がいを持つ方々が作られたさまざまな工芸品などが展示販売されています。
まるーわとは、アフリカの言葉(チェチェワ語)で「花」の意味があります。ここに関わる人たちすべてと「一つの輪」になって進んでいきたい、という願いも込められています。
養生伝承館を訪れ、薬漬けの医療から脱却し、自然との共生に立ち返ろうという竹熊先生の思想にぜひ触れてみてください。
またとない人生である。
ふたつとない命である。
自ら重んじ
自ら愛せよ
(養生語録)