荒神信仰をご存じでしょうか。激しい霊威・神威をもたらす「火」にまつわる神である火の神、竈(かまど)の神を荒神と呼び、家の守護神、作物の神として、古くから信仰されてきました。
加藤清正公が荒神様の熱心な信者であったとのことで、熊本城築城に際してお城の守り神として荒神様が祀られていたそうです。
そして、およそ300年前に細川綱利公が西浦の地に別荘を作ったさいに、別荘の鬼門にあたる場所に、方除神として熊本城から荒神様が移されたのが、今回ご紹介いたします西浦荒神社であると言われています。
この火の神・竈の神を祀る荒神信仰に、仏教・修験道の三寳荒神信仰が結びついたものが、台所など屋内で祭られる荒神信仰(三寳荒神信仰)となりました。これとは別に、屋外に祀られている荒神もあり、こちらは地域共同体で祀る「地荒神」というものです。
三寳荒神は、仏教において日本独自の信仰対象となっているもので、本来の仏典には根拠がありません。荒神の形成にはわからないことが多く、その成立にあっては、日本の土着信仰を核として、密教、道教、陰陽思想、陰陽道が複雑にからみあっているものと思われます。
熊本県の荒神信仰は、屋敷荒神と三月荒神がありますが、なかでも熊本県北部地域で信仰される三月荒神は、熊本の荒神信仰でもっとも特色があるものです。
これは、三月ごとにいらっしゃる方角を替える方位神としての性質を持ち、移転、新築、増改築、土木工事、開店等で、この荒神の方角に向かうと祟りがあると考えられています。
三月荒神は成立時期や祭神など不明点が多く、信仰を受けついだ神社によって考え方が異なっている部分が見受けられます。
たとえば、荒神の移動について、西浦荒神社は「旧暦の1月から東、4月から南、7月から西、10月から北」「三ヶ月間は同じ方角にとどまる」という考え方のもと、信仰なされています。
しかし、神社によっては、時計のように日々移動しつづけている(1年かけて全方位を1周する)とするところもあります。
新しく家を建てるときなどは、荒神様の方角を確認していただき、もし荒神様の方角に向かう方角にあたる場合などは、こちらの西浦荒神社へ参拝し、荒神様へのお断りのお祓いをしてもらうとよいかと思います。