「熊本の観光地を勧めるのもいいが、もっと食べものをアピールしたほうが女性受けがいいんじゃないか」、というアドバイスをいただきまして。それでは熊本名物の「だご汁」のうまいところはないかと思い当たったのが、峠の茶屋公園でした。
峠の茶屋公園は、熊本県道1号を熊本市方面から河内方面へ車を走らせ、本妙寺(加藤清正公を祀る浄池廟のあるところ)を過ぎて5kmほどのところにあります。ハイキングコース「草枕の道」の沿線上でもありますので、金峰山のふもとから、漱石の足取りをたどって訪れるのがいちばん正当派な楽しみ方なのでしょう。(足腰が丈夫であれば、ですが・・・)
「草枕の道」とは、夏目漱石が友人の山川信次郎とともに、天水町の小天温泉へと旅へ出かけたときに通った道のことです。この旅のときの話を元にして、夏目漱石は草枕を書いたといわれています。このときに鳥越峠(とりごえとうげ)と野出峠(のいでとうげ)を超えるのですが、このときに立ち寄った茶屋が草枕に登場しています。上の写真にもあります、「『おい』と声をかけたが返事がない・・・」という有名な一節が、それですね。
鳥越峠と野出峠には、当時はどちらにも茶屋が存在していました。そして、漱石が立ち寄ったのがいずれかは、わかりません。現在は、野出峠の茶屋はなく、この鳥越峠の茶屋が再建されて存在しています。(野出峠の茶屋のあったあたりは、展望公園として整備されています。)
峠の茶屋記念館。峠の茶屋を再現された、たいへん趣のある建物です。
峠の茶屋記念館では、昔ながらのかまどなど、煮炊きに使われた古道具、夏目漱石の写真や解説文などが展示されていました。奥には五右衛門風呂もあります。
再現された五右衛門風呂。
宮崎駿もここを訪れたということで、峠の茶屋公園の各所に、宮崎さんの色紙が飾られていました。
庇にわらじが下げられています。草枕に「五六足の草鞋が淋しそうに庇から吊され屈託気にぶらりぶらりと揺れる下に駄菓子の箱が三つ許り並んでそばに五厘銭と文久銭が散らばって居る」という一節があるため、その様子を再現したのでしょう。
室内にもわらじが下げられていました。火鉢のある民家など、いまはもう無くなってしまいましたね。
峠の茶屋記念館は、実際に茶屋があった場所より一段低いところに作られていまして、実際の峠の茶屋があった場所には、石碑と古井戸が残されているのみです。
峠の茶屋跡の石碑の文言。
さて、そろそろ「だご汁の話はどこ行った?」となりそうですので、本題のだご汁の話に戻ります。この日は日曜日ということで、20人は収容できそうなお店にもかかわらず満席で、10分ほど待たされたのち、中に通されました。ここのだご汁を食べたくてやってくるお客さんはとても多いみたいですね。
わたしはあわ飯だご汁セットを注文。同行したカメラスタッフさんはだけのこ飯だご汁セットを頼んでいました。
2人分のだご汁。だんごは歯ごたえがあってプリプリしてて、食感も楽しいおいしい逸品です。野菜もたっぷりはいっていて、味付けもしょうゆベースの素朴なもので、なつかしい感じがします。おばあちゃん家で食べたような、熊本の一般家庭のだご汁の味そのもの、といった感じです。
茶屋まんじゅう。スイートポテトを揚げたようなお菓子で、全体的にやわらかくて、イモの甘みが存分に味わえます。コーヒーとのセットで頼んでも300円ということですから、ちょっとお茶したいときにはオススメしたいです。
金峰山は熊本市中心部からとても近いところにありながら、都市部の喧噪から逃れられる癒しのスポットです。団体ツアーではまず立ち寄られないようなところを、タクシーでゆったりまわるのもよいかもしれませんよ。ぜひ熊本のおいしいものを食べながらあちこち巡ってみませんか?今回は紹介していないおいしいだご汁屋はまだありますよ!