来迎院で見られる松本喜三郎の生人形


松本喜三郎は、 文政八年(一八二五) に熊本の 井手ノ口町(現在の熊本市中央区迎町)に生まれた、当時、一斉を風靡した生(活)人形師(いきにんぎょうし) です。

生涯に数百体を作り上げたとされていますが、現存しているのは10点ほどにすぎません。そのうちの貴重な1体を保管・展示されている、来迎院に今回はお邪魔いたしました。


20代のころ、生きた人間と見紛うような、等身大の人形を作ったことから、生人形師と呼ばれるようになりました。現実の人間を再現するという、リアリズムあふれる作風で人気をはくし、 若き頃から地蔵祭りの「造りもの」で名を馳せ、やがて大阪難波新地や浅草奥山へと活動の場を移していきます。

そこで 「浮世見立四十八癖」、「西国三十三所観音霊験記」などの見世物興行で 、生きているかのような等身大の生人形で世間の人を驚かせました。
  


こちらが来迎院に保管されている「聖観世音菩薩像(しょうかんぜおんぼさつぞう)」です。1887年の作品とされており、高さは110cmあり、喜三郎の代表的な作品といえます。実物を前にすると、その生人形の精巧さ、瑞々しさに、目をみはることになります。

しかし、西洋のものがもてはやされる西洋崇拝の世相のなか、 しかも見世物細工となれば低俗なものだと見られてしまうこともあり、松本喜三郎の名は忘れ去られていくこととなりました。


なお、日本ではじめ義足を作ったのも、松本喜三郎であると言われています。歌舞伎役者の三代目田之助のために作ったものがそうなのですが、外観こそ完璧だったものの、適合が悪く使い物にはならず、それを恥じて代金は受け取らなかったと言われています。

彼は東京大学の前身である東校から、人体模型制作の依頼を受けたさい、そのあまりの見事な出来栄えに対し、「天物天真創業工」という賛辞が贈られたとされます。


御朱印をいただいているところです。こちらでは、写経・写仏カフェなるものも定期的に開催されておりますので、ご興味のあるかたは公式ホームページを訪れてみてくださいね。

①毎月第3土曜日 『写経カフェ×お抹茶』

②毎月不定期『写経カフェ』(毎月開催日が変わります)
*HP、SNS等で事前に告知いたします。10時〜18時(受付17時まで)


木造閻魔王坐像(天保4年・1833年)。来迎寺には、松本喜三郎の作品以外にも、歴史のある宝蔵品が多数保管されています。


来迎院は、熊本市春日の万日山の中腹にありますが、奈良時代に創建されたとされています。

もともとは法相宗で松山(西万日山)に奥の院を持つ三十六坊の大寺院で、山上に本堂があり、かつて僧房があった場所にこの来迎院が建っていると言われています。

フェアトレードや子どもサポート事業など、さまざまな社会貢献活動も行われていて、写経体験などもできる、開かれた活発なお寺さんですから、松本喜三郎の作品に会いに行くもよし、仏教体験に行くもよし。ぜひ訪問されてみてはいかがでしょうか。